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 東京某所3月・・・。

 厳しかった冬の寒さは既に感じられず、春を感じさせる優しい暖かさを、ふと感じさせるそんな頃。

 春休みのせいか、行き交う人々のなかに、元気な子供達が多く見られる、そんな街角に、見るからに地方からやってきたと分かる女の子が一人、途方に暮れたように立ち尽くしていた。
結城千種 「え〜と、ここ、どこだろう・・・。
 あーん、わかんなくなっちゃったよう!
 絶対この辺りに新女の事務所があるハズなのに・・・早くしないと入門テストが始まっちゃう!
 せっかく、ドラゴン藤子さんみたいなレスラーになりたくて、東京までやって来たのに・・・!

 そ、そうよ!
 こ、こんな時にはまず落ち着かなくっちゃ!
 手のひらに"人"って書いて・・・飲み込む・・・ゴクン!

 ・・・って、これは人前でアガらなくなるおまじないじゃない!
 ああああああああああああああ!

 また、そのすぐ近くの街角に、なにか不機嫌そうな表情の少女が歩いていた。
 こちらも東京の人間ではなさそうだが、その軽快で個性的なファッションは、街で遊ぶのに慣れている、そんな雰囲気を感じさせる。

 武藤めぐみ 「・・・あ〜あ、なんか面白いことないかなぁ。
 だいたい、エミは彼氏と遊べばいいけどさ、あたしはこっちに知り合いなんかいないんだから・・・。
 東京って言ってもこんな郊外で、明日までどうすればいいのよ!
 旅費は出すからって言葉につられて、こんな旅行に付き合うんじゃなかったわよ!
 そりゃ、買い物とかは楽しかったけど・・・。
 やっぱ、一人じゃつまんない!・・・何か面白いことないかなぁ」

結城千種 「と、とにかくなんとかしなくちゃ・・・。
 そ、そうよ!
 こんな時には誰かに道を聞けばいいんだわ!

 え、え〜と、え〜と、誰にきこうかな。
武藤めぐみ「へ?あたし?」

結城 千種「は、はい、そうです。
 あ、あの〜、ちょっと道を尋ねたいんですけど・・・。
 新日本女子プロレスの道場がこの近くにあるハズなんですけど、わかりませんか?」

武藤めぐみ「しんにっぽんじょしプロレス〜?
 あなた、プロレスラーなの?あんまりそんなふうには見えないけど・・・。」

結城 千種「い、いえ、あたしまだレスラーじゃなくて・・・。
 その、だから、テストがあるから合格したらレスラーになれるかもしれないんだけど・・・ああ、もうこんな時間だわ!」

武藤めぐみ「へえ〜?
 じゃあ、あなた、これからプロレスのテストを受けに行くの?
 ・・・なんか、おもしろそうね・・・。」

結城 千種「あの・・・?
 新女の道場なんですけど・・・。」

武藤めぐみ「あたし、知らないわよ。
 だって、ここの人間じゃないモン。」

結城 千種「ええ〜っ!?そ、そうなのぉ!
 そ、それじゃぁ、別の人にきかなくちゃ・・・。」

武藤めぐみ「まあ、待ちなさいって。
 おもしろそうだから、あたしも一緒に探してあげるわよ。」

結城 千種「本当!?あ、ありがとう!助かりますぅ!」

武藤めぐみ「確か、さっき交番があったハズだから、そこで聞こうよ。
 あ、あたし武藤めぐみ。
 めぐみって呼んでいいよ。あなたの名前は?」

結城 千種「あ、あたしは結城千種っていいます。」

武藤めぐみ「チグサちゃんね。
 ところで、そのプロレスのテストって誰でも受けれるの?
 ・・・例えば、あたしとか。」

結城 千種「え?そ、そうね、身長の規定とかあるけど、そんなのはあまり問題にはならないと思う・・・。
 要はやる気と体力なんじゃないかなぁ。
 ・・・もしかして、あなたもテストを受けるつもりなの?」

武藤めぐみ「えへへ。ちょうど、あたしも退屈してたところなのよ。
 プロレスのテストなんて、めったに受けられるモンじゃないしね。
 あたし、これでも、けっこう、運動神経いいんだから!
 高跳びのジュニア記録も持ってるんだよ!」

結城 千種「へえ、すごいんだぁ。めぐみって。
 でも、体力テストがあるから運動できる服装がいるよ?」

武藤めぐみ「大丈夫!このままで十分、なんでも出来るから!」

結城 千種「そういうワケにはいかないよォ。
 ・・・そうだ!あたしが予備のジャージ持ってるから、貸してあげようか?」

武藤めぐみ「え、ホント!?ありがとう、千種!」

結城 千種「ホント言うと、テスト、一緒に受けてくれる人ができて、ちょっと嬉しいんだ。
 だから、あたしからも・・・ありがとう!」

武藤めぐみ「それは、どういたしまして。
 それじゃ、とにかく交番まで行こうか?」

結城 千種「うん!」

 ※ナレーション
 結城 千種
 武藤 めぐみ
 これが2人の天使の運命の出会いであった。

武藤めぐみ「あれ?・・・新日本・・・
 新日本女子プロレス!?」
 千種、千種!もしかして、ここかな!?

結城 千種「へ?新日本・・・。
 そう、ここよ!こんな目の前にあったなんて!
 わぁい!テストに何とか間に合ったみたい!!」

武藤めぐみ「あはは、ついてるわね、あたし達!」

 ※ナレーション
 彼女達が果たしてトップイベンターになれるのか・・・
 ・・・それは、まだ、誰にもわからない。

試験官「それでは、これからテスト合格者を発表します」

 ※ナレーション
 新日本女子プロレス・・・
 IWWF世界ヘビー級チャンピオン、マイティ祐希子をトップに掲げ、彼女に挑む最強の女神達が集う国内屈指の女子プロレス団体。

武藤めぐみ「ふわわ〜。
 思ったよりきつかったけど、他のコと比べたら、あたしずいぶんマシだったよね。」

結城 千種「・・・め、めぐみったら、余裕あるね・・・(ドキドキ)。」

 ※ナレーション
 それだけに、毎年、入門を希望する少女達は後を絶たないが、その狭き門をくぐり、リングへ昇る資格をつかめる天使の卵達はほんの僅か・・・。

試験官「28番、結城千種!」

結城 千種「は、はいっ!!」

武藤めぐみ「やったじゃない、おめでと千種!」

結城 千種「ありがとう、めぐみ!めぐみのおかげだよ!」

試験官「29番、武藤めぐみ!」

武藤めぐみ「・・・えへへ、どういたしまして!あたしも面白い経験ができて楽しかったよ。」

試験官「29番!いないのですか!?」

結城 千種「め、めぐみ!29番って、めぐみの事じゃ!?」

試験官「29番の人!!」

武藤めぐみ「はい、はい、はぁい!ここにいまぁす!
 ・・・まいったな、あたしも、受かっちゃったの!?」

 ※ナレーション
 そして、さらに、その中から幾重もの黄金の翼を持つ女神が誕生することは、まさに稀な事だが・・・

試験官「以上、2名はこの場に残ってください。
 他の人達は、残念ですが、不合格です。」

結城 千種「めぐみ、すごいよ!いきなりテスト受けて受かるなんて!おめでとう!」

武藤めぐみ「えへへ、ありがと。」

 ※ナレーション
 とにかく、こうして2人の天使達は最強の女神達が待つリングへと上がる資格を手に入れたのだ・・・。

マイティ祐希子「・・・フフ、面白そうなコ達が入ってきたわね。楽しみだね・・・。」

 あたし、武藤めぐみ、17歳。静岡県出身で血液型はAB型よ。中学時代にハイ・ジャンプのジュニア記録を出したから、ジャンプ力にはちょっと自信があるわ。
 プロレスは時々見てたけど、けっこうおもしろそうよね。でも、やるからには、トップを目指すわよ!
 あたし、結城千種、17歳。愛知県出身で、血液型はA型です。趣味で草野球をやってるんですけど、下手の横好きで・・・。東京でもどこかのチームでプレーしたいですね。
 ドラゴン藤子さんのファンで、家でもブリッジの練習とか、少しやっていました。レスラーになったら、一生懸命頑張ります!
 

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 おまけ


入寮後の二人



祐希子と市ヶ谷の試合に魅入る二人





場外乱闘に巻き込まれる二人





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